・かき氷 — 阿佐美冷蔵@埼玉県(1)--
阿佐美冷蔵のかき氷は、今では非常に珍しく貴重なものとなった天然氷でつくられている。秩父の山中で、約4ヶ月かけて、丹精込めて育てられるとっておきの天然氷だ。
店内のメニューには、その天然氷の出来上がる過程が紹介されている。
- 10月、念入りに氷池を掃除。底に亀裂がないかチェックし、場合によってはセメントで修繕する。
- 11月中旬、沢の水を引き込む。水が凍り始め、7cmほどの厚さになると、氷上に立ち、毎日枯れ葉の掃除。
- 雪が降ると昼夜を問わず池に出かける。雪と同様、雨も注意。あまりにひどい場合は初めからやり直す。
- 厚さ14chに育ったら切り出し。切り出す大きさを測りながらヘラで氷面を削り、線を引いていく。
- 伝導カッターで切り出し作業を行う。ちなみに気温は氷点下。寒くて、雪や雨の少ない気候が最適。
- 切り出した氷を池から引き上げる。氷の大きさは50×70ch、重さ60kg。かなりの重労働だ。
- 氷を氷室に運ぶ。割ったり傷つけたりしないよう、細心の注意を払いながら氷室の中に積んでいく。
昭和5年に造られた氷池の掃除にはじまり、沢の水を引き込んでからは、来る日も来る日も、氷の上に落ちる落ち葉や雪を掃除する。
どれほど手間のかかる天然氷だろう。これほど丹精込めてつくられたかき氷など、そうお目にかかれるものではない。
店内に入り、メニューの裏に記された天然氷の作り方を見て、驚くばかりか、感心する。
どおりで、夏も終わり、徐々に涼しくなってきた10月初旬であっても、行列の絶えないお店というわけだ。
席にかけて、10分ほど待つと、かき氷が運ばれてきた。
「大きい」
一目見た感想だった。
"蔵元秘伝みつ"をかけ、ひとすくいして、口に運んだ。
驚くほどすぐに口の中で溶けて消えた。
"蔵元秘伝みつ"は、これまでに食したどんなかき氷のシロップよりも、上品な甘さがあり、深みのある味だった。
季節により、付いてくるものが変わるが、今回訪れた際に付いてきた抹茶あんが、これまた、違う響きを与える。
甘過ぎないが、これだけ大きなかき氷を食べ続けると、慣れてくる"蔵元秘伝みつ"の味わいも、抹茶あんをひとすくいすることを挟むだけで、最初に味わった"蔵元秘伝みつ"の味わいに戻る。
この"蔵元秘伝みつ"と抹茶あんは、絶妙なコンビネーションをつくっているのだ。
儚くも、口の中ですぐに溶けてしまう天然氷のかき氷。
阿佐美さんの自信作であるこだわりの"蔵元秘伝みつ"。
この組み合わせは、訪れた者にしかわからない、今の時代にめずらしいこだわりを味わえるヒトシナとなっている。
次のシーズンもぜひ。
いや、毎年夏にはここを訪れたい。そう強く思い、秩父をあとにした。
【阿左美冷蔵金崎本店】
・住所: 埼玉県秩父郡皆野町金崎27-1
・電話: 0494-62-1119
・ウェブサイト:http://rose.zero.ad.jp/vodka/